創作


Photo by さっちさん

スタジオコバコ
17.08.20





【注意】

※流血表現注意※


















【写真リスト】










【赤ずきん】

これは、私が"赤ずきん"と呼ばれるまでのお話。




私は、雪のように綺麗な真っ白の服が好きだった。
お母さんが作ってきれたお気に入りの頭巾を被って、今日もおばあちゃんの家へとお見舞いへ行く。




いつもおばあちゃんは私を笑顔で迎えてくれる。
一人で暮らすには不自由な森の中、私たちの家に越してこないかと何度も話し合ったけど、おばあちゃんはおじいちゃんと暮らしたこの家から離れたがらない。

狼に襲われたんだ、とお母さんはこっそりと私に教えてくれた。
森の中は怖いから、うんと気を付けて、まっすぐ帰ってくるのよ、そうお母さんは心配するけれど、一度も狼の姿を見ない私はこっそり道草を食っていく。
一人で寂しいおばあちゃんのために、森の中でお花を摘んで飾るのだ。




今日はリンゴが美味しそうな紅色に染まっていたから、お家へのお土産にしようと摘み取った。





お母さんには道草食って!と怒られるなぁと思いながらカギを回して扉をあけると、嗅ぎなれない匂いが鼻を刺激し、思わず顔をしかめる。
なんだろう、この匂い…それにやけに静かだわ。
何やら不穏な空気に、鼓動がどんどん速くなる。

無理にでも自分を落ちつかせようとするが、冷や汗が肌を伝うのを感じる。
意を決して部屋の中を伺と、さっき摘んだばかりのリンゴと同じ紅色に染まった部屋の中、一目で"生きていない"事が分かる変わり果てた姿の両親が、床に転がっていた。
手に持っていたはずのカゴが、床にぶつかる音がした。
同じ色に喜ぶように、リンゴが踊る。




「----」





悲鳴さえも上げられない。
意味のなさない声だけが口から漏れ出す。
ただ湧き上がる様々な感情が体の中で暴れ回り、押さえつけなければ引き裂かれてしまいそうだ。


***





「ねぇ、お母さん…どうしてこんなことになったのかな。」

「そうだね。森は怖いところだって、お母さんずっと言ってたね。」




「怖いのは、狼だけじゃなかったんだね。」

森では強くなければ生きていけないって、お父さんも言っていた。

そう、だから。
私は強くならなきゃいけないんだ。

いつの間にか、お母さんとお父さんの色に染まった頭巾を掴む。





私は生きる。
この森の中、信用出来るのは己だけ。





森に行くようになって贈られた、お守りの小刀。





あの頃は、何もわかっていなかった--。



でも、今なら分かる。
信用してはいけない。甘い言葉に騙されてはいけない。隙を見せてはいけない。




いつしか私は"赤ずきん"と呼ばれるようになった。


***





森に入る時は気を付けて。赤ずきんが出るかもしれないよ。



【あとがき】

戦う赤ずきんっていいよねー!と産まれた創作「赤ずきん」
健全(?)な感じじゃなく、残虐に殺された両親の死体を目にして精神ぶっ壊しながらも生にしがみつく赤ずきんでした。
狼と対等に戦いライバルとしてバトルを繰り広げるのも良かったけれど…!(こっちなら健全(??)だったのに!
でも今回はボッチじゃなく、さっちさんが撮影&創作の相談に乗ってくれて超楽しかったです!
しかもアバウトな設定をしっかり汲み取って綺麗に撮影してくれて、ありがたかったです…本当にありがとうございましたー!!